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ー保温工事の施工例|現場タイプ別の仕様・手順・効果をやさしく解説ー

まずは全体像:施工例を読む前に押さえる見方

「どんな現場で、どの材料を、どう施工し、どんな効果が出たか」を同じ目線で比較できるよう、各施工例では〈現場の背景〉〈仕様〉〈施工手順〉〈導入効果〉〈ポイント〉の順で整理します。保温工事は配管・ダクト・タンクなど対象物の形と温度帯によりアプローチが変わります。具体例を通して、材料選定やディテールの考え方をつかんでいただければ、計画段階での抜け漏れが減り、投資効果も読みやすくなります。ここから先は、高温ライン・低温ライン・空調ダクト・給湯循環・屋外設備とケースを分けてご紹介します。

施工例1:工場の蒸気配管(高温ライン)

高温ラインは放熱ロスが大きく、省エネ効果が出やすい代表例です。長い幹線とバルブ・フランジが多いほど、ディテールの作り込みが効いてきます。

現場の背景と仕様

製造エリアの蒸気主配管(150℃前後)。ロックウール成形品にアルミクラフト被覆、外装はカラーガルバ0.4mmを採用。サドル部は断熱ブロックで当て、ハンガー周りの熱橋を低減しました。フランジ・バルブは着脱式の成形カバーで標準化しています。

施工手順(要点)

既設保温の傷みを部分撤去→下地清掃→成形品を目地詰めして連続化→外装板金の重ね方向を下流側に統一→識別表示と回転方向表示を貼付。高所は仮設足場を共有し、安全帯と落下養生を徹底しました。

導入効果とポイント

幹線部の表面温度が大幅低下し、通路の暑熱感も緩和。燃料使用量が目に見えて減り、空調の負荷も軽くなりました。ポイントは「熱橋部の作り込み」と「着脱式カバーの統一」。点検ごとに復旧品質が安定し、省エネ効果の持続につながります。

施工例2:食品工場の冷媒配管(低温・結露対策)

低温ラインは結露が最大課題です。防湿層の連続性と厚み設計が要で、わずかな欠損が再結露を呼びます。ここでは防湿施工のディテールに注目します。

現場の背景と仕様

–10〜5℃帯の冷媒配管。発泡ゴム系保冷材(厚みは露点計算で算定)、ジョイントは専用接着剤で密着。防湿層はアルミラミネートテープを重ね幅規定で貼付し、屋外区間のみ薄鋼板で外装。貫通部はスリーブと気密シールで止水。

施工手順(要点)

配管表面の油分・水分を除去→保冷材の切断面を面取り→接着剤のオープンタイムを守って貼り込み→テープは巻き方向を統一し、端末はキャップ処理→貫通・吊り金具周りは現場成形で段差なく納めます。

導入効果とポイント

ドレン滴下が解消し、床の滑りやすさが改善。庫内の温度も安定し、冷凍機の霜付き頻度が低下しました。ポイントは「露点に基づく厚み」と「テープ・接着のルール化」。職人ごとの“勘”に頼らず、手順書で再現可能にすることが重要です。

施工例3:商業ビルの空調ダクト(室内環境と省エネ)

ダクトは面積が大きく、室内の快適性に直結します。表面放熱・熱侵入を抑えると、空調の立ち上がりと温度ムラが改善します。大型テナントでは夜間作業の段取りも鍵になります。

現場の背景と仕様

天井内の送風・還気ダクト。グラスウールボードにアルミクラフト仕上げ、機械室周りのみ外装板金を追加。点検口・ダンパ周りは分割貼りで点検性を確保し、吊り金具周囲は現場成形で継ぎ目を逃がしました。

施工手順(要点)

テナント休業時間に合わせた夜間施工→粉塵養生と通路確保→ボードを目違いなく貼り、ジョイントは十字継手を避ける→アルミクラフトのシワ・浮きをローラーで圧着→ラベルで系統名・風向を表示。

導入効果とポイント

開店直後の室温立ち上がりが早くなり、温度ムラが縮小。空調電力も低下しました。ポイントは「点検部の分割設計」と「夜間の段取り」。入居者の動線を乱さず短工期で終えるには、工程表と資材搬入計画が効きます。

施工例4:病院の給湯循環(安全・衛生・安定供給)

医療機関では、やけど防止と安定温度の維持が重要です。保温は安全性と衛生管理の土台になり、同時に循環ポンプの負荷も軽減します。

現場の背景と仕様

給湯循環配管・貯湯タンク周り。けい酸カルシウム保温材+薄鋼板外装。通路交差部は触感温度を下げるため二重化、バルブは蝶ナット式の着脱カバーを採用。表示は系統名・流向・表面温度のステッカーで統一しました。

施工手順(要点)

通行量の少ない時間帯に系統ごと切替→保温材の目地を詰め、段差をサンド→板金の端部は折り返しで手切れ防止→着脱カバーは開口・復旧の手順を写真付きで掲示し、作業の属人化を防止。

導入効果とポイント

患者様エリアの接触事故リスクが低減し、給湯温度の変動が縮小。循環ポンプの運転音が安定し、省エネ効果も確認できました。ポイントは「触れ得る場所の配慮」と「復旧手順の見える化」。誰が復旧しても同じ品質になる仕組みが大切です。

施工例5:屋外タンク・配管ラック(耐候・止水ディテール)

屋外は雨水・紫外線・風荷重の影響が大きく、外装板金の精度が長寿命を左右します。止水ディテールと固定方法を誤ると、CUI(被覆下腐食)が進みやすいので要注意です。

現場の背景と仕様

屋外貯槽と配管ラック。ロックウールマットにカラーガルバ外装。縦ハゼは水下へ、横継手はハゼ重ね幅を規定。端部はキャップとシーリングで止水し、風の抜けを考慮してビスピッチを狭めました。

施工手順(要点)

既設外装の打痕・開口部を補修→マットの縫い合わせはステンタイで腐食抑制→板金は展開図で先組みし、現場での切断を最小化→勾配方向に合わせて雨仕舞いを作り、排水経路を確保。

導入効果とポイント

降雨後の滞水がなくなり、点検時の内部乾燥状態が維持。表面温度低下で作業環境が改善しました。ポイントは「水の道をつくる」こと。重ね方向と端末処理、貫通部の三重止水で、長期のCUIを抑えます。

小物・複雑部の施工例:バルブ・フランジ・ポンプ周辺

大口径や長直管より、意外と熱ロス・結露の起点になるのが小物部です。ここを着脱式で標準化すると、点検のたびに復旧品質が安定します。

仕様と納め方のコツ

バルブは成形カバーにバックル固定、フランジは二分割+目地塞ぎ。ポンプケーシングは型紙採寸で現場成形し、漏斗形で水を逃がす外装に。サドルは断熱ブロックを当て、支持金具からの熱橋を最小化します。

効果とチェックポイント

開口・復旧時間が短縮し、結露の再発や隙間風の侵入が減少。チェックは「連続性」「端末」「貫通」の3点に集約。写真管理とラベル表示を徹底し、誰でも同じ手順で組み戻せる状態を維持します。

効果を確実にする運用:検査・表示・保守サイクル

施工が終われば完成ではありません。保温の効果を維持するには、検査項目と表示ルール、保守サイクルを回す必要があります。ここでは各施工例に共通する運用の型をまとめます。

検査の型(初期・定期)

初期は表面温度・気密・結露有無をチェック。屋外は散水や降雨後の滞水確認、板金の重ね方向・ビス浮きの目視を追加。定期では打痕・膨れ・変色・粉化の有無、端末シールの劣化を点検します。

表示とドキュメントの型

系統名・媒体・温度帯・流向・開口方法を外装に明記。施工写真と材料証明、展開図を竣工図に編綴し、改修時の参照性を確保します。表示があるだけで、トラブル対応の初動速度が変わります。

まとめ:現場に合う“型”を持てば、施工はぶれない

保温工事は、温度帯・形状・環境に合わせて最適解が変わりますが、施工例ごとの「型」を持てば迷いが減り、品質と効果が安定します。高温は熱橋対策、低温は防湿連続、ダクトは面での連続化、給湯は安全と復旧、屋外は止水ディテール――という要点を踏まえ、計画から運用まで一気通貫で設計しましょう。現場の制約や稼働条件が厳しくても、段取りと標準化で着実に成果を積み上げられます。施工例を自社の状況に当てはめ、まずは影響の大きいラインから順に“型”を導入していきましょう。

2025.10.17