保温工事の仕事に就くために必須の資格はありません。就職してからでも資格取得支援制度がある会社もあるため、未経験でも挑戦しやすい業界といえます。
とはいえ、関連する資格を取得すると、仕事をするうえで任せてもらえる範囲が増えたり転職に有利だったりとメリットが多いのも事実。本記事では、保温工事に役立つ資格と労働条件などの働く環境について紹介します。
なかなか聞きなじみのない保温工事業界。しかし、経験や資格を身につけて徐々にスキルアップできる環境はやりがいもあり、おすすめな職業です。
保温工事とは
保温工事とは、配管やダクトなどの設備に保温材を取り付けることで、熱放散を防ぎ、設備内や建物内の温度を一定に保つために行われる工事です。
一般的に、以下のような場所で工事が行われます。
- 工場
- 学校
- ショッピング施設
- マンション
聞きなじみのない言葉ですが、意外と身近な建物で行われている工事です。
特に地球温暖化の解決が急務となった昨今では、保温工事における省エネルギー対策も注目を集めています。
保温工事に携わるなら熱絶縁施工技能士を目指そう
保温工事に携わるなら、国家資格でもある熱絶縁施工技能士の資格取得を目指すと多くのメリットがあります。熱絶縁工事とは、保温・保冷工事の正式名称です。
保温工事を行うときの基本となる、熱の伝わり方や機械・工具の取り扱い方、図面の読み方などの知識を習得できる資格です。
取得するメリット
熱絶縁施工技能士の資格を取得すると、以下のようなメリットがあります。
- スキルの証明になる
- 仕事の範囲が広げられる
- 給料アップや転職に有利
- 作業に自信が持てる
特に、熱絶縁施工技能士の資格は国家資格なため、1級もしくは2級を取得すれば、主任技術者になることが可能です。主任技術者とは、建設業において工事現場に必ず配置しなければいけない技術者のことを指します。
主任技術者になるためには、学歴・実務経験年数の要件と資格保有の要件の2つを満たす必要があります。建設業界にとって主任技術者になれる人材の確保は大変なことです。
そのため、熱絶縁施工技能士の資格を取得することが、転職や給料アップに有利になるわけです。
資格の概要
熱絶縁施工技能士は、基本級・1級・2級・3級まで等級があります。基礎級と3級に関してはだれでも受験可能ですが、1級と2級の場合は実務経験が必要です。
必要な実務経験は以下のとおりです。
- 2級…実務経験2年以上
- 1級…実務経験7年以上もしくは2級取得後であれば実務経験2年以上
また、1級と2級に関しては学科試験のほかに実技試験も受けなければいけません。実技試験は、保温保冷工事作業もしくは吹付け硬質ウレタンフォーム断熱工事作業のどちらかを選択して行います。
厚生労働省が出している「令和4年度「技能検定」実施状況」によると、令和4年度の熱絶縁施工技能士の合格率は約49%です。決して高いとはいえない合格率ですが、目指す価値のある資格といえます。
保温工事業界の実際
普段の生活ではなかなか目にする機会の少ない保温工事。実際の仕事現場はどのような労働条件なのか、確認してみましょう。
労働条件
働く場所は建築物によって移動することになります。だいたい数ヶ月から2、3年の工期のうち、保温工事は後半に行われる工事です。新しい機器や施工方法を取り入れることによって、作業効率が上がり、作業員の負担軽減が図られています。
休日は週休2日制を基本としていますが、工期の遅れなどによって残業や休日出勤も発生する可能性があります。工場のメンテナンス工事などの場合、工場が休業する正月やお盆などに作業を行うことも。
年収
令和4年賃金構造基本統計調査によると、保温工事に関わる職種の年収は全国平均で460.7万円です。国税庁が発表した令和4年の全国平均年収が458万円なので、全国平均とほぼ同等の賃金といえます。
賃金は、日給月給制を採用。ただし、数量請負の場合は出来高で支払われることもあります。プラント設備の保温工事は、全国的な異動があるため、賃金の地域格差は少ない傾向です。
就業するまでの流れ
保温工事に携わるためには、必ずしも資格や経験が必要ではありません。就職したあとに、会社の資格取得支援制度を活用して、スキルアップを図ることがほとんどです。
そのため、高校などを卒業したあと、すぐに保温工事施工会社に就職することで、保温工事に携わることが可能になります。就職先を選ぶ場合は、研修や教育体制が整っているか確認すると未経験でも安心して仕事に取り組めるでしょう。
熱絶縁施工技能士以外で役立つ資格5選
熱絶縁施工技能士以外にも、保温工事に携わる際に役立つ資格が以下の5つです。実際の現場でも知識があることで事故を防げたり作業をスムーズに行えたりするので、持っていて損のない資格でしょう。
- 高所作業車運転員(作業床10m以上)
- 足場の組立て等作業主任者
- フォークリフト運転員
- 玉掛技能者
- 研削といし取替作業員
高所作業車運転員(作業床10m以上)
技能講習を受けることで取得できる国家資格です。高さが10m以上で高所作業車の運転を行って作業しなければいけない場合、必要な資格になります。
足場の組立て等作業主任者
建築業界では、足場からの転落などによる労災事案が多数発生しているのが現状です。労働安全衛生法により、足場の組み立てや解体を行う作業員に対して特別教育を実施することが義務となっています。
なかでも作業主任者は、足場の組み立て・解体などの作業を指揮するための資格です。作業方法だけでなく、作業員への教育に関する知識も必要となります。
フォークリフト運転員
フォークリフトは、最大荷重が1tを超えるか否かで資格が異なります。1t以上の場合は、技能講習を受講して取得する国家資格が必要です。
玉掛技能者
玉掛けとは、工場や建設現場で重い荷物にフックなどを掛けてクレーンで持ち上げる作業のことです。18歳以上であれば、誰でも取得可能です。
研削といし取替作業員
研削といしとは、金属や木材などの材料を削って表面を整えたり適切な寸法に加工したりすることです。高速回転する砥石を安全に扱えるように、正しい取り付け方や運転の知識を習得するための資格です。持っていると、工場や製造業でも活躍できるでしょう。
まとめ
保温工事に携わるなら、国家資格でもある熱絶縁施工技能士の資格取得を目指すとよいでしょう。給料アップや転職に有利です。
これから保温工事は、省エネの観点からもますます注目される分野になります。知識を証明する手段としてもメリットの多い資格なので、興味のある人はぜひ挑戦してみてください。